―Tango Gameworksについて
サバイバルホラーというジャンルを確立した、大ヒットゲームシリーズ『バイオハザード』の"生みの親”として知られる三上真司が中心となって2008年に立ち上げたTango Gameworks。ゼニマックス・メディア・グループの唯一の日本の拠点である開発スタジオから『サイコブレイク』などの世界に誇るハイエンドコンシューマーゲームを世に送り出しています。クリエイターが面白さとやりがいを得られ、なおかつ売れるゲームを作る。そんなTango Gameworksでゲームプランナーとして活躍する西河繁範さんと高坂颯さんにお話を伺いました。
―コミュニケーションを取ることが仕事の大半だからこそ、採用で重要視しているのは“人間性”
ーーこれまでのキャリアとゲームプランナーになったきっかけを教えてください。
西河:私はゲームプランナーになって今年で24〜25年になるんですが、元々はテレビ番組の制作をやっていたんです。ただファミコン第一世代なこともあり、常に身近にあったゲームの仕事に興味があって。あるゲーム会社を経てカプコンに中途入社し、弊社の創設者である三上真司の元でいくつかゲームタイトルの開発に携わりました。その後、転職したプラチナゲームズでも縁あって一緒に仕事をした三上をはじめ、当時いた社員数名とTango Gameworksを立ち上げ現在に至ります。
高坂:私はTango Gameworksにゲームプランナーとして新卒入社し、今年で5年目になります。最近はゲームプランナーを養成する専門学校もありますが、私の場合は北海道の大学でゲームとは全く関係ない勉強をしていました。でも、西河さんと同じように小学生の頃からゲームボーイアドバンスやPlayStationで遊んでいて、ずっと自分が楽しんできたものを作りたいというゲーム開発への憧れはあったんです。ただ技術や知識が全くなかったのでゲーム開発会社への就職活動は、かなり苦労して…唯一採用してくださったのがTango Gameworksでした。
ーー西河さんは高坂さんの面接官を担当していたとのことですが、お二人とも当時のことは覚えていらっしゃいますか?
高坂:面接ではゲームが好きという思いを伝えたのと、高校生や大学生の頃に地域で開催されているお祭りなどのイベントの企画に携わっていたので、そういった経験を話したのは覚えています。
西河:多数の人を面接しているので、正直細かいことは覚えていないのですが(笑)。ただ、高坂の場合は顔を合わせた最初の10秒くらいで「あ、この子は採用しよう」って思った記憶はあります。面接ではこれまでのことやゲームプランナーを目指したきっかけなどを伺いますが、人物像が見えづらい人ほど長く喋る傾向がありますね。高坂の時は第一印象で決めていたので、実際のところはどうなのかを確認する程度でした。
ーー専門的な知識や技術力があるかどうかではなく、人間性を見て採用を判断されるのですね。
西河:ゲームプランナーを採用する時はウエイト高くその人の人間性を見ていますね。プロジェクトを進行する中でゲームプランナーは色んな人とコミュニケーションを取る必要があるんです。それが仕事の大半と言っても過言ではありません。だからチームの人間に馴染める人かどうかは重要なポイントです。特に弊社は癖のある年上の先輩もたくさんいるので(笑)。それでも高坂は彼らと対等にコミュニケーションを取れる。20代でそれができる人って意外と少ないんですよ。だからあの時の私の直感は正しかったと思います。
―ゲーム開発は正直しんどい。だからせめて作業中は面白おかしく楽しんで
ーー高坂さんは実際に入社して、大変だったことはありますか?
高坂:弊社はなるべく早く新人を現場に出すという方針があり、入社から1ヶ月後にはチームに入って仕事をしていたのですが、ゲーム制作に関する知識が0の状態だったので、メンバーに企画や工程を説明する際に言葉足らずになってしまったことがたくさんありましたね。ただ、うちは新卒のアイデアにも耳を傾けてくれる先輩が多いんです。もちろんつまらないことに対しては「つまらないよ」と正直な感想をぶつけられるんですが、たとえつまらないことでも一生懸命聞いてくれるだけで嬉しかったですね。先輩後輩関係なく意見交換ができて、より良いものをお互い納得して作っていける環境だなと思います。
ーー西河さんは若手を育てるために大切にしていることはありますか?
西河:入社してすぐにやってもらうことの一つに、「面白いゲームのネタを一言一行で出してもらう」という研修があります。その意図としては、面白いと思うことを簡潔に伝えられる能力を養うため。例えば好きな漫画やアニメがあったとして、「何が面白いの?」と聞いた時に普通はパッと答えられないことが多いと思うのですが、これを答えられることがゲームプランナーの軸となります。我々プランナーにはプログラマーやデザイナーの方に考えた企画の面白さを伝える力が最も求められるんです。
ーー面白いことを考えるって簡単そうに思えて実はとても難しいことだと思うのですが、アイデアが浮かばない時にご自身でされていることがあれば教えてください。
高坂:私の場合は人と話すことですかね。例えば悩んでいることに関して、担当しているチームのメンバーであったり、プランナーの先輩や後輩に相談してみる。ブレインストーミングではないですけど、悩みを話すことで自分の中で考えが整理できることもありますし、時には相談した相手から自分が気付けなかった不満や悩みが出てくることもある。だから、たとえ自分の中で答えが出ていたとしても、なるべく色んな人と話して意見を聞き、分析とリサーチを深めるようにしています。
ーー気軽に相談できる環境をつくるために、どのようなことを意識されているのでしょうか。
西河:一つのチームに100人を超えるくらいのメンバーが参加していますし、その中には外部から出向してきてくれているスタッフもたくさんいるので、新人はなかなか顔を覚えてもらえないんですよね。だからまずは、意図的に挨拶をするように促しています。挨拶一つにしても、ちょっと話すだけで相手の人間性がわかるじゃないですか。チームに入ると否が応でも話す必要があるので、お互いがどんな人間かを分かった上で仕事に入ると作業がしやすいんです。
高坂:私は仕事以外の話も含めて時間がある時には会話するように心がけていますね。例えば各々が机の上に好きなアニメのフィギュアや漫画を置いてあるので、「これ好きなんですか?」という風に話しかけてアイスブレイクを取っています。うちはゲームに限らず面白いものに対する興味を持っている人が多いのも特徴で、サバイバルゲームやボルダリングが好きな人同士の集まりがあったり、交流も兼ねて他のセクションの人と遊びに行くこともあるんですよ。
西河:よく学生の方にどんな社風ですかと聞かれることが多いんが、うちはざっくばらんにやっています。ゲーム開発って正直しんどい時もあるので、できるだけ面白おかしく楽しんで作業できるように心がけているところはありますね。今はなかなかリモートワークで難しいところではありますが、作業中の雑談も全然OKですし、部活動のような雰囲気で臨んでいます(笑)。
―三上真司は創設者である前に一流のクリエイター
ーー西河さんはカプコンにいた頃から創設者の三上さんとご一緒に仕事をされてきたとのことですが、社員の皆さんにとって三上さんはどのような存在なのでしょうか?
西河:三上は創設者である前に一流のゲームクリエイターです。彼は自分が面白いと思うことを発信する力と、ユーザー目線に立って俯瞰的にもの作りをする力に長けている。面白さを貪欲に追求している人ではあるけれど、ただ単純に自分がやりたいことだけを追い求めているわけじゃない。自分が作りたいものでいかにユーザーを楽しませるか。どちらにも偏らないバランスの良い考え方には社員全員が影響されていると思います。
高坂:私の場合は入社前から『サイコブレイク1』の大ファンでしたし、バイオハザードの生みの親と言われている方なので“雲の上の存在”という感じでした。でも、実際に三上さんと一緒に仕事をさせていただいた時に感じたのは、常に面白いと思うものをお客さんに届けたいという思いを芯に持っている、いちクリエイターだということ。それに三上さんは私の倍以上長く生きていらっしゃるんですが、いくつになっても“新しい”面白さを追求している方なんですよ。新しいソーシャルゲームやSNSサービスが出たらとにかく使ってみていますし、「一生勉強は続く」という言葉を体現している方だと思います。一切妥協しない姿勢に私自身も感銘を受けていますね。
ーー三上さんをはじめ40〜50代の方もいれば、高坂さんのように20代の若手もいて年齢層が幅広いんですね。
西河:一時期30代くらいの社員がすぽんと抜けて、若手がいない時期が続いてたんです。それで、これでは時代遅れになっちゃうぞという危機感があり、今では毎年新卒を少しずつでも採用して若手を育てていこうと考えています。うちは40代以上の社員も多いんですが、その方たちがいつまで第一線で活躍されるかはわからないですし、10〜20年後を考えた時に上の人間が持っているノウハウを下の世代に受け継いでいかなければスタジオが続いていかない。また、バランスよく年齢層を保つことはすごく重要で、例えば40代ばかりが集まったチームが面白いものを作ったとしても、世に出した時に同じ世代の人間にしか刺さらない可能性もある。出した以上はたくさん売りたいし、幅広い年齢層の人に楽しんでほしいので、年齢国籍問わず色んな価値観を持った人の意見を吸収できるチームづくりを目指しています。
―ゲームづくりに大切なのは、“味”を明確にすること
ーー色んな人が集まっているからこその難しさもあると思うのですが、特にチームをまとめるゲームプランナーにはコミュニケーション能力が必要とされそうですね。
西河:ゲームプランナーは常に人に何かをお願いする立場なので、要望をいかに相違なく、なおかつ短い時間で伝えられるかが大事なんです。また一方で、相手の言わんとすることを理解する力も必要。例えばお願いしたことをできないと言われたら、額面通り受け取るのではなく、なぜできないのかを分析して違う提案をしなければならない。すぐにそうですかと諦めてもダメだし、とにかくやってくださいと押し付けるのもダメ。プログラマーはプログラマー、デザイナーはデザイナーの価値観でやっているのでぶつかることもしょっちゅうですが、それをコントロールするのがゲームプランナーの仕事だと思っています。
高坂:よく言っている意味は同じだけど、使っている言葉が違うだけですれ違うことがあるんですよ。だからこそ、私は実際にプログラマーやデザインの方が使っているツールの知識を養ったり、専門的な用語の意味を調べるようにしていますね。そういった知識があるだけで「じゃあこういう進め方はどうですか?」という風に近い立場で提案することができるので。自分が作らないにしても、できるだけ理解するように努めています。
西河:常々言っているんですが、企画で一番大切なのは思いやりだと思っています。思いやりがなければ、目の前にいるチーム人にしてもユーザーにしても、人様の心を動かすことはできない。特にゲームは映画や音楽と違って、双方向なエンターテインメントなので、プレイしてくれる人がいて初めて成り立つものですから。いかにプレイしたいと思ってもらえるか、途中で飽きさせないようにするか。そのためには、ゲームの“味”を出す必要がある。例えば、RPGやアクションといったゲームジャンル一つにしてもそれぞれに特徴があり、そこが最もそのゲームの面白さだと思うんです。だからこそ、どんな味なの?このゲームは何味なの?というところを明確してあげることが重要。一番ダメなのは可もなく不可もなく、美味しいけどまた食べたいとは思わない味。どちらかといえば、激辛だけどまた食べたい味を目指しています。
ーーその中で、これまでやりがいを感じたエピソードを教えてください。
高坂:『サイコブレイク2』の開発に途中から参加させていただき、企画書を書いて実装したことがあるんですが、ゲームをプレイした友人から「面白かったよ」って言われたり、YouTubeなどで実況してくれる方が怖がっていたり、楽しそうにプレイしている姿を見た時はやりがいを感じましたね。作り終わった瞬間も達成感はありますけど、やっぱり世に出てたくさんの方がプレイして楽しんでくれるのが一番の喜びです。
西河:外食中に、後ろの席の人がうちのゲームの話をしてくれているのを耳にすることがあるんですが、そういう時は思わず会話に入りたくなりますね(笑)。クレーム言ってないかな?ネガティブなこと言っていないかな?って。ドキドキはするけど、全く関わりない人が自分たちが作ったゲームの話をしてくれているのは嬉しいです。昔はゲームの発売日にビックカメラやヨドバシを回って、買っていく人たちを眺めたりもしましたが、本当にユーザーの反応が気になるんですよ。
ーーYouTubeやTwitterなどのSNSサービスがあるからこそ、反応を得やすい時代と言えるかもしれませんね。良い反応を得られることもあれば、逆にネガティブな意見がないか気になったりもしそうですが…。
西河:世界中から反応を得られますからね。発売日前からどのくらい話題になっているかもわかりますし、クリエイターとしては助かります。ただ、過剰な期待値がある時は正直怖いですね。例えば発売日前に出したPVの映像だけで「これはすごいゲームだ!」と前評判が上がっている時は、その期待を裏切っていないか不安にもなります。特にコンシューマーゲームは一度出すとアップデートすることがなかなか難しいので、最後までチェックが欠かせません。
―サバイバルホラーだけを作るゲーム会社では無い
ーー今はスマホでも様々なソーシャルゲームが楽しめる時代ですが、お二人のコンシューマーゲームにかける思いを教えてください。
高坂:個人的な理由として、私はコンシューマーゲームで育った世代なので根本としてコンシューマーゲームで色んな人に喜んでもらいたいという思いがあります。ただ、うちは面白いものであればコンシューマーに限らず、何でもアイデアを出していいという方針があるので、今後はどうなるかわかりません。もしかしたら数年後にソーシャルゲームを作っているという可能性もあるとは思います。
西河:コンシューマーゲームって基本的には必ずゴール=ゲームクリアがあって、そこで達成感を得られるという点でソーシャルゲームとはまたちょっと違うと思うんですよね。言うなれば、観た後に充実度や満足度を得られる映画に近い。うちのゲームには全てにストーリーがあるので、記憶に残りやすいのかなと思います。大人になっても友達と「あのゲームはこうだったよね」と共通の話題の一つとしてネタにあがっていたら嬉しいですね。
ーーまた、Tango Gameworksは“サバイバルホラー”というジャンルを確立されていますが、他ジャンルのゲームプレイ経験や開発経験がそこで活かされたりもするのでしょうか?
西河:実際にRPGやスマホ向けのゲームを作ってきた人もいて、それぞれがその時の知識を活かして開発に臨んでくれていますね。元々、サバイバルホラーに限らず面白いゲームを作りたいという三上の思いから生まれたスタジオなので、うちは面白いものならゲームじゃなくてもいいよ!というくらいの勢いで様々なアイデアを出し合っています(笑)。サバイバルホラーだけを作るゲーム会社ではないですし、多ジャンルの面白いゲームを作りたいという気持ちはみんな持っていると思いますね。
ーー最後にゲームプランナーの先輩として、お二人が今後どういった方と仕事をしたいかを教えてください。
西河:大前提として、面白いと思うことを発信するのが好きな人じゃないとこの仕事には向かないと思います。なおかつ発信したことに面白い、あるいはつまらないと何かしら反応が返ってきた時に興奮できる人がいい。これまで色んな新人を見てきましたが、面白いものを発信することは好きだけど、案外発信して終わりの人が多いんですよ。でも普通はアイデアを出したら、リアクションが欲しいじゃないですか。意見を聞いてこない人は自信がないか、または出して満足しちゃうかのどちらか。私個人としては、発信した後に「これどう思いますか?」と聞いていける人、そしてその意見を元にもっと面白くしてやろうという気概をもった人と働きたいですね。
高坂:私はまず、西河さんがおっしゃったように熱意がある方。アニメや映画など何でもいいんですが、ゲームに限らず自分の好きなものについて熱く語れる人や、いいと思ったことを周りの人に発信できる人とは一緒に仕事をしたくなります。
ーー西河さんは採用面接に参加されることも多いと思いますが、そこではどんなことに注目されているのでしょうか。
西河:採用面接に来てくださる方はゲームクリエイターを目指して、数あるスタジオの中からうちを選んでくれたわけなので、まずはなぜゲームクリエイターになりたいのか、そしてなぜTango Gameworksなのかを質問しています。同じ質問でもアピールするポイントは人それぞれ違いますし、うまく話せなかったとしても熱意は伝わってくるものだと思うんです。何度も言いますが、ゲームに関する知識とかゲーム制作の経験ではなく面白いものを作りたいと言う熱意が大事。寝食を忘れるほど夢中になれる方を待っています。
―MESSAGE
西河:現在はレベルデザイナーをメインに積極採用を行っていますが、大前提として「ゲームクリエイターになりたい」という熱意がある方を広く募集しています。未経験でどうしていいか分からない、何を勉強していいか分からないとか不安はたくさんあると思うんですが、それは入社してからちゃんと教えます。それよりも、自分が面白いと思うものを世に発信していきたいという熱い思いの方が重要。そういう方と日本から世界に誇れるゲームを発信していけるスタジオにしていきたいと思っています!
高坂:西河さんと同じで、面白いものを作りたい!と思っている方にはぜひうちにきて欲しいですね。私自身ゲーム開発に関する知識は全くない状態で飛び込みましたが、実体験として知識や技術を覚える機会は入社してからいくらでもあると言えます。今後の目標としては、大人になっても同世代の人と盛り上がれるような記憶に残るゲームをディレクターとして世に出すこと。世界をびっくりさせたい、面白いと言われたい方はぜひ私と一緒に夢を叶えましょう。
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