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2023.10.18業界情報

『アサシン クリード ミラージュ』レビュー。過去の栄光を追い求めた「あの日のまぼろし」のようなゲーム

なぜ人はゲームを遊び続けるのだろう。個々人によって理由は異なるが、私の場合は「そのゲームでしか得られない体験」を追い求めているからだ。たとえば、暗殺者教団のメンバーとして世界を駆け巡ったり、海賊行為をしたりギャングを率いたり。ゲームの中でスパルタの戦士になることもあれば、ヴァイキングになったこともある。娯楽溢れる現代において、「何が何でも自分を選んでほしい」「今遊ぶ価値のある自慢の体験を用意している」と訴えかけてくる作品こそ評価したいと考えている。しかしながら『アサシン クリード ミラージュ』はかつてシリーズで遊んだ懐かしさ以上のものを提供できていない。その姿は手を伸ばせばたちまち消えていく、輝かしい昔日の幻そのものである。

『アサシン クリード ミラージュ』ローンチトレーラー

『アサシン クリード ミラージュ』はUbisoftより発売された3Dアクションゲー厶だ。舞台はアッバース朝のバグダッド。プレイヤーは古の暗殺者集団「隠れし者」の一員である「バシム」として、世界を裏で牛耳る結社に立ち向かっていく。対応プラットフォームはPC(Epic Games/Ubisoft Store)およびPS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S。なお本作からシリーズを遊んでも問題はない。

※本稿はUbisoftからコードの提供を受け、PlayStation 5版でのプレイに基づき執筆している。


それはあの日のまぼろし



シリーズ15周年を迎えた『アサシン クリード』シリーズは、もとよりステルスアクションゲームとして、クリアするだけなら“簡単”な部類にあった。フリーランニングによる自由自在な移動と、暗器による一撃死のシステムによって、ジャンルに苦手意識のある人でも比較的容易にゲームプレイが可能であった。そうした“簡単”なプレイに歴史のうねりの中で輝く主人公たちのドラマを組み合わせることで、巨悪をサクサクと成敗していく、ヒロイックな体験が成立していた。しかしながら、タイトルを重ねるごとに、簡単さ由来の問題も顕在化していった。プレイングの作業感とゲームデザインのマンネリ化である。“簡単”を維持するあまり、ゲーム内だけでなくシリーズを通して体験の形を大きく変化させることができなかったのだ(ゲームプレイの簡単さというものは、プレイヤーが理解すべきシステムの単純さ以上に、学習経験を継続して活用できることが重要である)。

そのため開発陣はさまざまな試みを通じ、この問題の解決を図っていった。マルチプレイや海戦など新たなゲームモードを導入したり、シンプルにストーリークリアまでの難易度向上を図ったり。『アサシン クリード オリジンズ』から続くアクションRPG化や、ステルスプレイをより強調した『アサシン クリード クロニクル』も発売された。だが、完全に問題が払拭されたわけではなかった。海戦やマルチプレイの導入など高評価を受けたものもあるが、高まった難易度は結局『アサシン クリード シンジケート』の時点で明確に低下し、変化として導入したアクションRPG化も、継続によってマンネリが生まれてしまった。

そしてさらに、新たな問題も浮上した。「アサシンクリードらしさ」とは何か、というシリーズが持つアイデンティティのゆらぎである。先述したように・・・

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